海外との違いから考える日本の医療制度

日本の医療制度を考える際、海外の制度と比較することは非常に有益な方法です。医療は人間の生活の根底にあるものですが、その取り扱い方は国によってかなり違いがあります。まず、アメリカの医療制度について見てみましょう。アメリカの公的医療制度は、65歳以上の高齢者と障害者が対象である「メディケア」と、低所得者層が対象の「メディケイド」があるだけです。その他の現役世代は、民間の保険会社が提供する医療保険に加入することで保障を得ています。自由と競争を尊ぶアメリカの国民性に合った方法ですが、このやり方では当然何の医療保険にも加入していない無保険者が大量に発生し、長く社会問題になっています。

イギリスは国営の国民保健サービスNHSによって医療が提供されています。イギリス国内に住所を持っていれば、窓口での負担や保険料負担なしで医療を受けることができます。ただし、自由に受診する病院を選ぶことはできず、予め登録したかかりつけ医の診断を受けることが、厳密に決められています。窓口負担がないので誰でも安心して病院に行ける反面、常に病院が混雑していて、すぐ診てもらうことが困難になっているという問題もあります。

日本の医療制度は「社会保険方式」と呼ばれ、アメリカやイギリスに比べると少々複雑にできています。まず、利用者である国民はいずれかの公的医療保険に加入し、利用者と勤務先企業が保険料を支払っています。また、病院の窓口では一定の自己負担金を支払うことになっています。日本の医療保険が持つ「国民皆保険」と「フリーアクセス」という特徴は、非常に優れた制度として海外からも評価されているのです。